「月御門(つきみかど)――御門流って呼ばれる、陰陽師の一派だ。影小路は小路流って呼ばれていて、日本では御門と小路が一番でかいかな」
「その月御門の当主と若君が幼馴染で……白桜さんにはまだ嫌われてるんですか?」
「白には嫌われてねえからな。白里じいさんにだけだから。白とは仲いいから」
「わかりましたから二度言わないでください。惨めです。そんなことより……」
桜城くん、何気に毒を吐いた。
「真紅ちゃんは何も知りません。俺も、真紅ちゃんが始祖の転生だなんて初めて知りました」
「それは、本家筋の人間、十二家の長しか知らん。紅亜様のことがあるとはいえ、真紅を本家筋の人間だと見る向きはあるからな」
「ですが……」
「急にこんな話されても理解出来ないよな。いきなり悪い」
言いよどむ桜城くん。黒藤さんは私に向かってすまなそうに言った。がんばって黒藤さんと桜城くんの言葉を噛み砕いた。
自分とこの人は、従兄妹。母同士が姉妹。ママには双児の妹がいた。
ママは長子であったけど、何故か養子に出された。
ママから、『かげのこうじ』なんて名前を聞いたことはない。桜木家に養子に入って、そこで結婚したとは聞いていたけど。
それから、自分は陰陽師? みたいな力が眠っているそう。
「でも私、妖怪? とかおばけとか、見たこともないですよ?」
いわゆる霊感というものだろうか。そんなもの、欠片もなかった。
「これ、視えるか?」
と、黒藤さんは右掌を上向けて見せた。
「……鳥? 紫色の……」
黒藤さんの右掌の上を旋回し出したのは、小鳥だった。
私の答えを聞いて、黒藤さんは「ふーむ」と唸った。驚きを見せたのは桜城くんだった。
「真紅ちゃん……視えてるの? 涙雨(るう)のこと……」
「るう? 小鳥がペットなの?」
紫色の小鳥は、ふっと姿を消した。