「小路(こうじ)の家でも本家筋と各家の長しか知らない話だが――」

と、黒藤さんは前置きをした。

「真紅は影小路が始祖の一人の転生なんだ。母上は、真紅の力を封じておくための術をかけ、反動で眠りについた。真紅が誕生した時刻を迎える瞬間、母上は目覚める。そして、封じられていた真紅の陰陽師としての力は目覚める」

「………」

いきなり過ぎる話に、ぽかーんとするしかない私。桜城くんはただ蒼ざめている。

「簡単に言うとこうなるんだけど……すぐには理解しきれねえよな」

黒藤さんは自嘲気味に笑った。

「そ、それでは、なんですか? 若は真紅ちゃんを小路に入れるおつもりなんですか……?」

「小路に入る入らないは真紅の自由だ。俺の今一番の目的は、封じが解かれた瞬間に、真紅を護ること。母上の守護の術は絶大だ。いきなり解ければ、真紅の存在――小路の始祖がいると妖異に知られ、真紅は狙われる。……脅すつもりではないが、始祖は強大霊力を持つから、妖異に狙われやすい」

「狙われる……?」

私が反芻すると、黒藤さんは顎を引いた。

「小路の始祖の転生の血肉を得れば、妖異はまた大きな力を得る。……簡単に言うと、守護を失った真紅は、妖異に喰らわれる可能性が否定できない。それから護る目的で、俺は今日ここに来た」

「………」

話が、突飛過ぎる。

「………なんとゆうか……」

私はようよう口を開いた。

二人の視線を感じる。

「桜城くんが来てなかったら、私逃げてただろうなって思う……」

どんなファンタジーを話しているんだか、この人たちは。黒藤さんは苦笑した。

「だろうなあ。俺も、危ない人扱いで警察呼ばれるだろうから、ストレートに話すなって白(はく)――幼馴染に怒られてきたとこだ」

「御門のご当主も真紅ちゃんのことご存知のなんですか?」

「みかど?」

新しい言葉が出て来た。私が訊き返せば、黒藤さんが答えた。