「名前、何だっけ?」

私は今、姫抱っこで吸血鬼に運ばれていた。マイペースな鬼だった。何だかもの凄く疲れたので、もう抵抗しない。何度も言われている通り、気力を起こす血がないみたいだ。

「……まこ。真紅(しんく)って、書く」

「真紅、ね」

「そっちは?」

「小埜黎(おの れい)。黎明の黎」

「れいめい?」

「『黒』って意味だ」

「黎、で黒なの?」

「黒、つまり夜が明ける、で夜明けって意味合いで『黎明』らしいぞ」

「ふーん?」

「真紅……なんかお前やたら軽いから、家帰ったらすぐ寝ろよ? 貧血みたいな状態だから。あ、それともメシ食った方がいいのか?」

「……女子相手に体重の話とかデリカシーない」

「そういう問題じゃねえだろ、今の真紅は。……睨むなよ。わーかった。悪かった。女の子に失礼だったよな」

「………」

な、と柔らかい顔で顔を覗き込まれて、思わず目を逸らした。お、女たらしとはこういうのを言うのか……。そして自分のペースに巻き込んでしまうタイプなのだろうか。どんなに突き放してもびくともしない。マイペース強い。

「あのさ」

「んー?」

「色々と訊きたいことはあるんだけど」

「訊いてくれていいぞ?」

「……どうやって帰ってるの? てか、どこに帰るの?」