「……なんで俺が真紅と一緒にいるとか、お前がぐだぐだ言うんだよ」
「え? だって兄貴、真紅ちゃんのこと好きだろ?」
「………」
「………」
三秒ほどして、兄貴の顔が真っ赤になった。
「あ、兄貴……?」
「ちょ、ちょっと待て架。落ち着け」
「いや、別に焦ってないけど。落ち着くべきは兄貴だろ」
急にしどろもどろになった兄貴。なんていうか……乙女化している気がする……。似合わな。
「あー……傍(はた)から見るとそう見えんのか?」
「そうとしか見えなかったけど。病院で逢ったときも、俺が真紅ちゃんの友達だから腹立ててたんだろ?」
病院で真紅ちゃんを見つけたとき、傍らにいた兄貴。俺が真紅ちゃんの名前を呼んだら、兄貴と真紅ちゃんの間に割って入ったら、ものすごく不機嫌になっていた。
「……お前、なんで誤解受けるほど真紅の傍にいるんだよ」
「………だから家に興味持てって言ってるんだよ」
「お前こそ真紅のこと……」
「俺のはそういうんじゃない」
俺が真紅ちゃんの傍にいる理由は、恋愛感情どうのではない。
堂々巡りは、結局そこに帰ってしまう。
兄貴が何も知らないから、真紅ちゃんが何も知らないから。
俺だけが、知っているから。