え、えーと……。ゆるすもなんも……実のとこ、昨日の呼び出しからの、いるんなら彼氏に逢わせて、がなければ、黎とは再会できてもいなかったかもしれない。そしてまさか、例え役でも彼氏になってもらえるなんて。

少し考えてから、顔をあげた。

「じゃあ、これから先、他の人に今までみたいなことはしないでほしい。あと、桜城くんは私にとったら大すきな人の弟だから、もし……桜城くんに彼女が出来たときは、その……相手のこと、いじめたりは、しないでほしい」

反発を喰らうか、受け容れてもらえるか……少々危険な橋渡りの注文だった。

「わかった。約束する」

「みんなも、ね」

同意を求められた女子たちは、各々肯いた。

「いい、の……?」

「いいもなにも、こっちが訊きたいくらいだよ。……あたしたちが傷つけたのは桜木さんなのに、まだわからない人のことでゆるしていいの?」

「私は全然問題ないけど……。じゃあ、これからはよろしくお願いします」

私の顔がほころぶと、女子たちの顔も、更にどこか柔らかくなった気がした。

「うん。よろしくね」

「梨実さんにも、早く学校来てねって、伝えておいてね」

「あたしたちも今度、お見舞いに行ってもいいかな……?」

冷えていたものが急に融けて、気持ちが嬉しいものになっていく気がした。





黎と桜城くんの舌戦は、黎がかわして終わったようだ。

「じゃ、俺戻るから。またな、真紅」

「あ、うん。急にごめん。ありがと――

う、と言おうとして、私の思考回路は爆発した。今、『またな』、って言った……? ただの挨拶かもしれない。でも、また逢える可能性があるということかもしれない。

「俺はもうちょっと追い詰めてくるね」

まだ言い足りないのか、桜城くんは爽やかに言って黎のあとを追った。