え、えーと……。ゆるすもなんも……実のとこ、昨日の呼び出しからの、いるんなら彼氏に逢わせて、がなければ、黎とは再会できてもいなかったかもしれない。そしてまさか、例え役でも彼氏になってもらえるなんて。
少し考えてから、顔をあげた。
「じゃあ、これから先、他の人に今までみたいなことはしないでほしい。あと、桜城くんは私にとったら大すきな人の弟だから、もし……桜城くんに彼女が出来たときは、その……相手のこと、いじめたりは、しないでほしい」
反発を喰らうか、受け容れてもらえるか……少々危険な橋渡りの注文だった。
「わかった。約束する」
「みんなも、ね」
同意を求められた女子たちは、各々肯いた。
「いい、の……?」
「いいもなにも、こっちが訊きたいくらいだよ。……あたしたちが傷つけたのは桜木さんなのに、まだわからない人のことでゆるしていいの?」
「私は全然問題ないけど……。じゃあ、これからはよろしくお願いします」
私の顔がほころぶと、女子たちの顔も、更にどこか柔らかくなった気がした。
「うん。よろしくね」
「梨実さんにも、早く学校来てねって、伝えておいてね」
「あたしたちも今度、お見舞いに行ってもいいかな……?」
冷えていたものが急に融けて、気持ちが嬉しいものになっていく気がした。
+
黎と桜城くんの舌戦は、黎がかわして終わったようだ。
「じゃ、俺戻るから。またな、真紅」
「あ、うん。急にごめん。ありがと――
う、と言おうとして、私の思考回路は爆発した。今、『またな』、って言った……? ただの挨拶かもしれない。でも、また逢える可能性があるということかもしれない。
「俺はもうちょっと追い詰めてくるね」
まだ言い足りないのか、桜城くんは爽やかに言って黎のあとを追った。