「『様』なんて日常で使う言葉じゃないよね……」
「跡継ぎとか言ってるし……」
「由緒あるお家? とかなのかな……」
みんな、私を攻撃する毒気が総て抜かれてしまったようだ。
むしろ同情的な眼差しすら受ける。
「あの……ごめんね? 言えない理由……だったんだね?」
話しかけて来た女子が、そう言った。むしろ私は知らない理由だったけど、そう解釈してくれるなら、それでいいだろう。……二人の家のことは、本当に全然知らないし。
「今まで、ごめんなさい。今日は……最初から謝るつもりで、みんな呼んだの」
「へ?」
最初から? 昨日より大人数なのは不思議に思っていたけど……。
「その、昨日彼氏がいるって聞いた時点で……もの凄く罪悪感がきたの……」
「桜木さんに、架くんを独占されてるみたいに思ってて……でも、昨日の話聞いてから考えてみたら、桜木さんから架くんに話しかけたこともなかったな、て思い当って……」
その通りですね。いつも桜城くんから絡んできていたから。
そして今日の桜城くんの嘘八百が、その印象を後押ししてくれたのだろう。
桜城くんが人気あることはこの先も変わらないだろうけど、私には桜木くんに、恋愛感情がないとはっきり宣言出来たようなものだろうか。
「ごめんなさい。殴ってくれて構わないから」
「無理ですよ!? 女の子殴れるわけないじゃん!」
黎に裏拳を喰らわせたことは、当時の混乱に紛れて忘れている薄ぼんやりしている私だ。
「……どうしたら、ゆるしてもらえる?」
「………」