「適当に話合わすしかないな」
「うん」
私と黎が肯きあうのを見計らってか、桜城くんがしめた。
「――みんなの誤解は解けたかな?」
「あ、あの……」
女子からの返答を待たずに、桜城くんは黎の方へやってきた。にこやかに喧嘩を売る。
「ちょうどいいから、黎、このままうちへ帰らない?」
「無理だ」
「跡継ぎがいなくなって、弟の俺が割り喰って色々困ってるんだけど」
「知るか」
「黒藤様にまで心配かけてるんだよ? いい加減帰らないと黒藤様に黎のところへ行ってもらうよ?」
「なんであいつが出てくんだよ。俺が小埜の家にいるのは桜城も了承済みのことだろ」
……私の知らない兄弟の話だ。
困っていると、「桜木さん……」と控えめに呼ばれた。振り返ると、いつも何かと絡んでくる女子の一人だった。私同様に困った顔をしている。
「桜城くんのお兄さんと付き合ってたの?」
えーと……話を合わせねば。
「あ、うん。……桜城くんと兄弟ってのは、最初は知らなかったけど」
本当のところ、昨日までは、だけど。
「それで、桜城くんに協力してたの? だったらそう言ってくれればよかったのに」
まあ、今までの話が真実だったら、そう考えるだろう。
私は、ええと、と考える。黎とは、桜城くんに話を合わせるという方向にしたから……。
「それが……ご覧のとおり二人の家が複雑で、話していいかわからなくて……」
『ああ……』
よ、よかった……女子のほとんどから肯きが返ってきた。