「桜城くんのお兄さん……? それで桜木さんと仲良かったの?」
「真紅ちゃんとは普通に友達だってのもあるけど、真紅ちゃんには少し協力してもらってたんだ」
『協力?』
いつそんな話が。私も知らない話だ。
「そう。兄は跡継ぎのくせに家出しちゃってね。どうにか家に戻せないかって、真紅ちゃんが兄と付き合ってるって知ってから、画策してたんだ」
『………』
そ、そうだったのか。今初めて知る話だ。
「だから、俺が一方的に真紅ちゃんにまとわりついていたって言うか。……みんなも真紅ちゃんと仲良くしたいのに、俺ばかり話しちゃっててごめんね?」
桜城くんの困り顔の謝罪に、女子たち、戦意喪失だった模様。黎が小さな声で問うてきた。
「架って素であれなのか?」
「わ、わかんないけど……黎知らないの?」
「桜城の家にいる頃は、あんま関わりなかったからな」
「そうなんだ?」
「しかし……弟があそこまで出鱈目話が出来ると心配だな……」
「すごい口車だね……。私たち、いつから付き合ってる設定になってるんだろう……」
桜城くんの言い方では、私の彼氏が兄であると、早々に知っていた風に聞こえる。