「弟だ」

「おとうと!?」

「家出するし跡継ぎにならないとか言う放蕩者の馬鹿兄だよ」

「ほうとうもの!?」

……………………。

……取りあえず、二人は兄弟というところは理解出来た。そう言うと、

「それで充分だろ」

黎が桜城くんの手を払うと、桜城くんはさっと私の方に寄った。黎の眉も寄る。

「真紅ちゃん、なんで黎と一緒に?」

「え? えーと……」

「お前が原因で女子連中から因縁つけられてんだと」

「!」

そ、それ言っちゃうの!?

「え……どういうこと?」

真剣な表情で問われて、私は説明せざるを得なかった。





「そっか……ごめんね? そんなことになってるって知らなくて……」

「いや、私も言う気はなかったし……」

私を間に置いて、三人が並んで座るという奇妙な形に落ち着いてしまった。

「お前の周囲への態度に問題でもあんじゃねえのか?」

「黎に言われたくない。って言うか黙ってろ」

「………」

この兄弟、あんまり仲がよくない……? のかな……。桜城くんの態度が、一度も見たことないほど荒れている。桜城くんの今までの印象では、これでも私の認識だと『荒れている』方だ。

「でも、それなら俺がどうにかするよ」

「や、これは私の問題だし」

「でも原因は俺でしょ? 真紅ちゃんが彼氏役に頼ったのが黎なら、ちょうどいい」

「へ?」

私には意味がわからなかったけど、隣では黎がげんなりと疲れていた。