「……おい真紅」
「うん?」
「まさかお前の男友達ってこいつじゃ……」
「そうだよ? 桜城くん」
私がそこまで言うと、黎は片手で顔を覆ってため息をついた。
「……なんでよりによって架なんだ……」
「へ?」
かける? 下の名前で呼んだ?
私が黎に意識をとられている間に、桜城くんは距離を縮めていた。その勢いのまま、黎の胸倉を摑み上げた。身長では黎の方が上だから、桜城くんは見上げ睨みつける。
「なんで黎が真紅ちゃんの彼氏なんだよ」
「!」
桜城くんからは聞いたことのない冷えた声音に、驚きが過ぎて一瞬固まってしまった。
「俺が誰を女にしようがお前には関係ねえだろ」
お!? 今度は黎の言い方にびっくりした。彼氏役、やる気ないんじゃ……?
牙を剥いたのは桜城くんだった。
「関係あるに決まってんだろ!? 跡継ぎのくせに家出しやがって! 被害は全部俺に来てんだよバカ兄貴!」
………ん?
「あ、あの、桜城くん……? 黎のこと知ってるの?」
いくつか引っ掛かる単語があって、私は確認を求めた。
すると、服を摑まれたままの黎が先に答えた。