「へ?」
意外な言葉に顔をあげると、やはり不機嫌そうな黎がいた。
「そいつにも、男いるって話して置けば、そいつ経由で訊かれたときも誤魔化せんだろ」
「あ……」
確かにそうかもしれない。……でも。
「それじゃ、桜城くんには黎が彼氏って紹介することになるよ? 彼氏役、だけじゃなくて――」
「別に、この先俺がそいつらに逢うこともねえんだし、そういうことにしておけば?」
頓着なさそうに言われても、嬉しく思ってしまう。
「あ、ありがとう」
「真紅ちゃん。ここにいたんだ――
いきなり間に割って入った声にびくりとした。たまに私と一緒に海雨のところへは来ていたけど……。
「真紅ちゃん? え……なんで……」
桜城くんが、黎を見て呆然としている。知らない人が友達の隣にいて、驚いたのだろうか。私はなんとしようか迷ったけど、黎が逢わせるよう名指しした男友達とは桜城くんだ。そして、黎は言ってくれた。
「か、彼氏! 私の!」
堂々と――したつもりで――宣言したけど、黎からはなんの反応もない。……今になって彼氏役すらやる気なくした?
「………」
心配になってそっと目だけで伺うと、黎はなんとも言えない顔をしていた。
そして、ようよう口を開いてくれた。