「瞳」
「め?」
「瞳の色、この前と違くない?」
「ん? ああ……日本(ここ)じゃ悪目立ちするからな。黒のコンタクト入れてる」
「カラコン? じゃあほんとは、銀色なの?」
「だよ。母方の血筋かなー」
そう言えば、お母さんはイギリスの、とか言っていたっけ。
「でもそういうのって劣性遺伝子じゃなかったっけ?」
「劣性が優性に勝っちまったみたいだな。……それより真紅」
「っ」
名前を呼ばれただけで、心臓の震えがやばい。どうしよ……泣きそう――
「あれから、誰かにつけられてるとか、そういうことはないか?」
「? なんでそんなこと?」
疑問符を浮かべた私に、黎は「ないならいい」と言って立ち上がった。
「彼氏役ぐらいならやってやる。ただ――
「ほんとっ!?」
「……そこまで驚かんでも」
「いや、だってもう逢わないとか言われてたから――また逢っても、突き放されるかな、って……」
あ、だめだ。こえが震えた。
涙が浮かんでしまいそうな目元を隠すように、顔を俯けた。ぎゅっと目を瞑っていると、不機嫌でしかない声が降って来た。
「……その前に、一度その男友達、逢わせろ」