「ま、こ……?」

その、声も。知っている。

「れい……!」

暁なんかでは消えなかった。その存在は確かに在った。

「真紅……本物?」

訝(いぶか)し気な黎の胸元を思いっきり摑んだ。

「黎! 私の彼氏になって!」

「………は?」

感動の再会、なんてものより、よっぽど突飛な再会になってしまった。





「なるほど?」

中庭のベンチで、私は黎の隣に座っていた。

「男友達との誤解を解くために彼氏役が必要だったと?」

「うん……おなごは口先だけじゃ信じてくれなくてね……」

哀愁漂う私に、黎は不機嫌そうな顔をしている。

「そんなに仲いい奴、いるんだ?」

「別によくはないよ? よく話しかけてくれるのを、周りの女子が勘ぐっちゃってるだけだから」

「でもそれ、ヤローの方には下心あんだろ」

「なんで?」

「なんで、って……」

「私にそんなん持つわけないじゃん」

言い切ると、黎は疲れたように長く息を吐いた。

「彼氏役、頼める奴学校にはいなかったのか?」

「だって私、仲いい男友達とかいないし。それに……」

「それに?」

黎が彼氏になってくれたらいいなって思ったから、思いついたことだ。……とは、恥ずかし過ぎて言えない。

まっすぐに、ずっと見たかった瞳に見つめられて、慌てて黎から視線を逸らした。