「白桜様! お屋敷の中に招き入れるのは危険すぎです! 御身がどれほどの危機にさらされるか……!」
「いやお前のが危険だからな⁉ 未だにそれ持ってんのかよ! 鬼神(きしん)の名前捨てる気全然ねえだろ⁉」
「わたくしたちの大事な白桜様を御守りするためなら、今一度その名を纏うことも白桃(はくとう)姫様はお許しになられますわ……!」
「白桃様引き合いに出すな!」
黒い空気を纏う天音と、必死に抗議する黒。俺はため息をつくしかない。ちなみに、白桃とは俺の母の名だ。
「外でするのも難な話だろ。無炎(むえん)。無月(むつき)も呼び出して黒の見張りにでもついていてくれるか? それならいいだろ?」
「ま、とーぜん控えているけどな」
すっと姿を現したのは、紅い髪に着流しの青年。面差しは黒に似ている。
「無月。お前はこいつの首に縄でもつけておけよ」
無炎に呼ばれ、次に顕現(けんげん)したのは無炎と全く同じ顔で、髪の色だけが違う青年。こちらは、着物というよりは祭祀を司る官吏が着るような衣をまとっていて、黒と同じ黒髪だが紫がかっている。そして無炎とは違って感情の見えない表情と眼差しで黒に言う。
「黒藤。御門の家に入るお前は、白桜の幼馴染ではない。あくまで小路の後継者という立場、忘れるな」
「う~……白は可愛いのに~」
「それ家ん中で言うんじゃねえぞ」