気づけば薄闇の部屋でうずくまって泣いていた。
金切り声のママに見つけられて、顔をあげた。
首が痛い。
どれだけの時間を小さくなって過ごしていたんだろう。
「真紅ちゃん? どうしたの、包丁で切ったの?」
背中に手を添えるママ。……綺麗な人だった。
ずっと変わらない凛とした美しさの人だった。
少し冴え冴えとした面差しながら、雰囲気が柔らかいお母さん。
「ま、ま~……っ」
抱き着いた。
切ったように痛い。
どこだかわからない。ただ痛い。
「……助けてくれた人に?」
殺されかけたことや血がどうのというのは言わずに、ぼやかした言い方になってしまったけど……逢いたい人がいる、その気持ちは総て話した。
「………」
ママの問いかけに、こっくり肯いた。
暁になっても消えない想い。
どうすればいいの。
「そうね――」
ママは立ち上がり、押入れから私の習字道具を持ち出して来た。
中学時代選択授業で取っていたので、開けてすぐの場所に置いてあった。
その中から下敷き、半紙、文鎮、硯に墨を流し、筆を取った。
「……ママ?」