一人の家。それが当たり前だったのに。
……淋しさを、初めて感じていた。
ママと仲が悪いわけではない。
料理があまり得意ではない私を心配して、ママは毎日ごはんを作ってきてくれる。入院施設のある個人医院で看護師をしているから時間はまちまちだけど。昨日は朝に来てくれていた。
その間だけはアパートに母子(おやこ)が揃って、一時の笑顔が飾られる。
だから、それ以外の時間が独りだというだけで、別段問題があることはなかった。
ママが早く来た日は、海雨にところへ行って帰りが遅くなっても怒られることもない。
海雨以外に深い付き合いの友達はいないから、友達のとこへお泊りー、なんてことにもならない。
私は大勢で群れるより、気の合うたった一人といる方が楽で、すきだった。
だから、今まで生きて来て淋しいなんて感情を知らなかった。
黎がいない朝に、初めて襲ってきた孤独。
淋しい。
独りは嫌だと、大声をあげて泣きたくなった。
その声は、たった一人のすきな人に届けばいい。
届かないと知っているから、私は声をあげて泣くことはしなかった。
ただ、ひっそり泣いた。
引き結んだ唇。
とめどなく頬を流れるだけの涙。
そういう泣き方をした。
淋しさをこらえた泣き方。
……ねえ、まだすきなんだよ……。
暁になれば消える、なんて……嘘じゃない。
全然、すきじゃなくならない。
すきだよ。
もっともっと……たった一日で、こんなにすきなれるのかってくらいに……。
逢いたいよ。