ぼけーっとしている俺を不審に思ってか、振り返った。
「黎」
返事をしないでいると、また澪に名を呼ばれた。
「なんだよ?」
無視してるとうるさいので、眼鏡を押し上げ応じた。今は、瞳の色は銀ではない。
さっきまでぼけーっと書類に視線を落としていたけど、澪に呼ばれて意識ははっきりしている。
「ねえ黎。何かあった?」
……ありまくったよ。
「なんも」
素っ気なく返したけど、小さい頃から一緒に育った澪に隠し事、は意味のないことだった。
「……明後日で、いいんだよね?」
それは、じじいの決めた俺の食事の日。毎日ではなく、数日置いて与えられている。
たまに間隔を空けたり狭めたりして、じじいは俺を観察している。
「あー」と曖昧に肯いておいた。澪は顔を渋くする。
……何かしら、悟られたかもしれない。