「え……黎、もう逢えないの……? さっき、一緒に生きるって……」
「最期のときには逢う。でも、真紅は俺みたいな奴とは近づかない方がいいんだよ。それが人間の生き方だ」
「でも、さっき――私の血だけって……」
「言ったけど、正直俺はあんま血ぃいらないんだよ。半分だけだからかな」
「でも、まずい血を飲まされてたって」
「俺を支配下に置くために、な。血を与える、それは俺にとって主みたいなモンになるから、そいつがそういう存在である限り、俺はそいつらに反旗を翻せない。そういう意味」
「……もう、逢えないの……?」
淋しいよ。真紅の唇は小さく動いた。
「……それは、今だけしか思わない。暁(あかつき)になれば消える。だからな、真紅。……少しだけ、楽しかったよ」
「れ
「最期のときに、また逢おう」
真紅の目の辺りに手をかざして、影を作る。
「俺はお前に憧れたよ。綺麗な子」
――ふっと、真紅は意識を失って俺の腕に倒れて来た。
半分だけの吸血鬼。
こんなに綺麗な血をした子は、こんなに綺麗な心は、知らなかった。真紅が小埜の一族の中にいればよかったのにと思う。そうしたら俺は迷わず真紅を主に選んで、一生を傍にいたのに。
でも、真紅は人間。徒人(ただびと)。血をもらうなんて、それは禁忌。殺してしまいかねない。俺は純血の母と違って混血だから、吸血した相手を吸血鬼にすることがない。ただの人間を主にして血を求めれば、いつか殺してしまうかもしれない。主にした相手が吸血鬼ならば、不死の能力を持つ吸血鬼ならば、問題は薄れてくるけど。
恋しい人は求めても飽き足りない。殺してしまうほど、愛するしかない吸血鬼。愛する人の血を。
……血を失えば、人間は死んでしまう。ならば真紅は死なせたくない。恋しいから。慕わしいから。……愛しいから。
すきになりかけているかもしれないと言われたときは、それこそ心臓が止まるかと思った。自分が真紅に惹かれている理由は、その血だけだと思っていたから。