「………」

「逸らさないで。真紅。俺には彼女なんていない。それは本当」

「へ? でも、さっき結婚がどうのって……」

「うん、それはちょっと真紅をからかいたいと」

「そ、うなの?」

「うん。ごめん。ちょっと言葉が足りないと言うか……まさかそんな勘違いをされるとは思わなかった」

「……私の想像が過ぎた? 暴走だった?」

「過ぎた。暴走だった」

真紅は目を何度も瞬かせたあと、恥ずかしくなったのか俯いた。

「……黎さん、私はまだ十五なのでその対象に見られているとは思いませんでした」

「真紅、十五なの?」

「はい。高一です」

「彼氏は?」

「いないよ」

「そっか。ならいい」

「……黎?」

気を取り直して、進んでいた方を向く。

「自己紹介の続きだったな。俺は母親がイギリス人。父親が日本人。今は家を出て、昔から世話になってる知り合いのとこにいる。彼女はいないから、誰をすきになっても問題なし」

「イギリス人? ハーフ?」

「そう。寝る前に話したのと足せば、母親がイギリスの血を引いた純血の吸血鬼。父は日本の、こっちも半分くらい人間ではない一族の当主。簡単に言えば鬼と人の血が混じった鬼人って言われる類」

「それで……私の血? でも、助けてくれたんだよね?」

「うん。俺は完全な吸血鬼ではないから、いろいろ小手先が効く。俺の血を真紅に送った」

「黎の血を? え、じゃあ、今私――」

「真紅に流れてるのは、俺の血が混じってる」

「そんなことも出来るんだ。すごいなー」

「……それ以外にツッコむことないのか?」

「あ、っと。鬼の一族って言うのは、やっぱり日本には妖怪変化がいるの?」

……そこ?