隣を歩く黎明の吸血鬼。背が高いなあ……。私は平均身長だから、その顔を見ようとすれば大分見上げる形になる。

「……私、あなたに助けられた、んだよね……?」

「俺の名前わかるか?」

「……黎。黎明の、れい」

憶えていた。知り合いにはいない名前。眠る前に聞いた名前。この人のものだった。

もう一度呼んだ。「黎?」と。

「あたり。ちゃんとわかってるな」

「黎さん?」

「呼び捨てでいい」

黎明の吸血鬼――黎は続けて説明した。

「俺が知ってることを簡単に言うと、マズい血を食わされて頭に来てたところにうまそうなにおいがして行ってみたら真紅が倒れてた。俺が行ったとき、既に意識は朦朧としてたな。そのときに血をくれって言ったら、約束してくれるならやるって言ったんだよ。で、俺も本当に最初は、血をいただいてそのまま送るつもりだったよ」

「……え?」

「最初は、死にたがってるんだったら死なせてやろうって思った。はっきり言って致死量くらいは流れてたし、俺が何もしなくても時間の問題だったよ」

「………」

「でも、いざ血をもらったら、お前が泣き声あげたんだよ」

「………?」

「指一本動かせなかったお前が、俺にしがみついて、音のない悲鳴あげた。『生きたい』、って」

「……………」

「そしたら何でかなー、死なせたくないって思った」

「………!」

「もしもだけど、俺の隣なら、生きてくれるかなって考えた。……つーか」