「転校っ!?」
同じ日の夕方、私は海雨の病室を訪れた。私がここに来て海雨に逢わないわけがない。
「うん。ちょっと家のことがあって、斎陵学園に行くことになりそうなんだ」
「斎陵学園って――」
言葉を失った海雨は、そのまま視線を落とした。いつものように、窓の外を向いて並んでベッドに座っている私は、少し迷ってから口を開いた。
「……私、ママの生まれた家に入ることになった」
弾かれるように顔をあげた海雨に、偽らずに話す。
「影小路っていう家で、ママは生まれたんだって。そこの先代当主がママの双児の妹さんで、妹さんの息子――私の従兄が、次の当主になる人なんだって。……私はそこに入って、やることが出来た」
「……かげのこうじ……」
「……小路流の宗家。陰陽師の家、なんだって」
「陰陽師?」
「うん。私、そこへ入るって決めたんだ」
「……転校したら、逢えなくなる?」
海雨の声は淋し気に揺れている。
「ならないよ。何度でも逢いに来る。……もう一つ話すことがあるんだけど、聞いてくれる?」
「………」
海雨は否定も肯定もしなかった。
「黎と、付き合うことになった」
「ほんとっ!? 黎さんに告白したの!?」
「告白……あれ? してないな……でも、いつか結婚しようって言われた……」
私の独り言じみた言葉に、海雨はびっくりした。