「姉様、真紅。これからはわたくしが二人を護ります。だから、わたくしと一緒に暮らしましょう」

やっぱりその話になるか……。黎明のを排他した言いように、俺から見える真紅の顔は不安そうだ。すると紅亜様が鷹揚に肯いた。

「……真紅ちゃんの立場上、私もそれがいいとは思うわ。陰陽師や退鬼師として、私に教えられることはないから。――でもね紅緒」

「……なんです、姉様」

「黎くんを敷地内立ち入り禁止、とかにしたら、私と真紅ちゃんは出て行くわ」

「……くっ……」

「「………」」

俺と黒、半眼になる。姉君、妹君のやり口は把握済か……。

「で、でもでも、真紅を育てるのは黒藤にはまだ無理です。ここはわたくしが育てないと――」

「その理屈はわかってるわ。だから、紅緒も審査したらいいじゃない」

「……わたくしが?」

「母親としては、黎くんが真紅ちゃんと付き合うこと認めてます。だから、紅緒も一緒に暮らす叔母(おば)として、黎くんのことをちゃんと見てあげたらどう? 頭ごなしに否定して駆け落ちなんてされちゃったら私、紅緒のことを大っ嫌いになるわ」

「わわわわわかりました! ちゃんと真紅の相手として見定めます! だから出て行くとか嫌いにとかならないでくださいっ!」

『!?』

一変、泣きそうな声で叫んだ紅緒様に、四人そろってびっくりしてしまった。

各々(おのおの)、遅れて理解する。

⦅……真紅(私)がどうのというより、ただのシスコンか……⦆

と。

紅緒様は姉には逆らえないようだ。

「……紅亜様には是非とも小路に復帰してもらいたいな……」

小路流の正統後継者、かなり私見を含んだ意見ながら、俺も無言で肯いてしまった。