クエスチョンマークばかりを浮かべている黎明の。
紅緒様の存在も知っているかいないかというくらいで、一番現状を理解出来ていないのは黎明のだろう。それなのに投げ飛ばされたとは不憫な……。
「黎明の。着物の方は、影小路が先代で黒の母であり、真紅の母君の、双児の妹にあたる方だ」
「双児? 真紅と黒藤の母は姉妹なのか? じゃあ真紅は……」
「俺の従妹だ。突然の母の暴挙、代わって謝罪する。短気な母だったが、さすがに非道すぎる。すまなかった」
「いや、黒藤に謝られても……その前に、なんで俺は投げられたんだ?」
そこからか。真紅は一層強く黎明のの腕に抱き付いている。
離れないことが、真紅なりの黎明のの護り方なのだろう。
姉妹は未だに言い合っている。十六年ぶりに逢って、すぐに姉妹喧嘩って。黒は大きく息をついた。
「母上は、真紅を護る術をかけた反動で眠りにつかれていた。真紅のことは、陰陽師としてはご自身で育てるおつもりだったようだ。だから、自分の庇護下のように考えているんだろう。その真紅に、目覚めたら恋仲がいるという現状が面白くないだけだ。紅亜様がお認め下さっているのなら、真紅とのことは心配しなくていい。母上のことは気にしなくて――」
「黒藤ぉおおお! 何勝手に許し出してんのよ! 首カッ飛ばすわよ!」
「……気にしないでいい、と言いたいところだが……すまない」
「黒藤にそう謝られても落ち着かない。つまり俺は真紅の父親的位置の人に試されているということでいいのか?」
黎明のの理解に仕方に、真紅は首を傾げた。俺も内心唸る。ど、どうなんだろう……。
「わ、私お父さんいないからわからないけど……でも、ママの妹さんなんだから、認めてほしい……」
真紅の声は切なげだ。認めるかガキなんて言われたら、真紅はもう泣いてしまってもいいと思う。