「大体ねえ紅緒。鬼神であった鬼の頭領を連れて来て結婚したあなたが、真紅ちゃんの相手に文句をつけられると思うの? お父様もお母様もどれだけ反対していたと思うの」
「「え?」」
項垂れ気味だった真紅と黎明のが、同時に顔をあげた。鬼神に鬼の頭領……黒は小さく呟く。
「紅亜様は知っておいでだったか……」
と、頭痛でも覚えたように額を押さえている。紅緒様はキリッとした顔で答える。
「姉様、わたくしのことは今、関係ないです」
「関係あるわよ。真紅ちゃんと黎くんのことを反対してるの、紅緒だけよ? その当人の立場を突き詰めるのは当然のことでしょう」
「~~~姉様は本当に頑固なんですから……」
「あなたの姉なんだから仕方ないと諦めなさい」
その言葉には紅緒様は反論しなかった。黒と、こそこそ話す。
「おい、紅緒様が言い負けたぞ」
「紅亜様のお姉さん感がハンパないな」
いつの間にか俺も流れで傍観者を決め込んでいた。
「………」
黎明のの腕に抱き付いている真紅が、泣きそうな顔でこちらを見て来たので、そろりと歩み寄った。
「真紅、何があったんだ?」
小さな声で尋ねると、真紅は震える声で答えた。
「紅緒様が飛び込んで来て……私が黎に膝枕してたら、いきなり黎のこと投げ飛ばして、摑みかかったとこへママが来て紅緒様を止めてくれたの……」
「……投げ飛ばされたのか」
と言うことは……
「真紅? お前の母は二人いるのか?」