「見―ちゃった」

「! ま、ママっ!?」

ママを起こさないようにと静かに部屋に入ったつもりだったんだけど、ママは起きていてにまにまと私を見て来た。

「あの人が桜城くんのお兄さん? イケメンじゃない。真紅ちゃんやるわね」

「へっ、ヘンなこと言わないでよっ。って言うか全部見てたの……?」

「だって真紅ちゃんがこんな時間に出て行っちゃうんだもの。黒ちゃんの式がいるからとか、たぶん黒ちゃんか白ちゃんのどっちかの所とは思ってたから止めなかったけど、心配で寝てられなんかしないわ」

「う……ごめんなさい……」

非は私にあるので、反論なんかできようはずもない。

小さくなって叱責を待っていると、しかしママは怒ったりはしなかった。

「桜城の子ねえ……告白したの? されたの?」

「え? そんなことないけど……」

「でも真紅ちゃんちゅーしてたじゃない?」

「っ」

そ、そうだけど……。…………。うわあああああっ! 今頃恥ずかしくなってきた! ってか私何やってんの!? 付き合ってるわけでもないのに結婚申し込んだの!? どんだけイタい人だよ私! 黎が嫌がってたらどうしよう……!

真赤な顔で噴火したあと落ち込んだ私を見て、ママは「あららー?」とにやにやする。

「って言うかママどこまで見てんの!」

「変質者だったら警察突き出さなきゃじゃない」

「………」

う……当初、黎を変質者扱いしたのは他ならぬ自分だ。

「ママは、反対はしないわよ? 真紅ちゃんが本当にすきなひとならね?」

「………」

こっくり、肯くことで応えた。

本当に、すきな人だと。

ママが抱き付いて来た。

「やーん真紅ちゃん可愛い~っ。お兄さんと早く付き合っちゃいなさいよ~」

頬をスリスリしてくるママ。恥ずかしさで顔をあげられなかった。