「私がお願いしたの。白ちゃんのとこに連れて行ってって」

「はくちゃん? ……まさか月御門のガキのことか?」

「そうだよ。るうちゃんは、黒藤さんが私のとこに置いてくれてるの」

「………」

はくちゃんにくろとさん。

…………。

「なんでお前はそうガシガシ踏み込んでくる。こっちの話は危ないことばかりだぞ」

「私の問題だからだよ。……黎がどこまで知ってるかは知らないけど私は――わっ!?」

真っ直ぐに睨んでくる真紅の瞳を見たくなくて、思い切り抱き寄せた。間で潰された紫色の小鳥が『のーっ!』と悲鳴をあげたが、無視。

俺の突然の行動に驚いたのか、真紅は怒る余裕もないように泡喰った。

「あ、あああの? 黎? お、怒ってる? よね? でも、その――」

「なんでお前はそう――……ただ護られていてくれない」

大事だから、安全な場所にいてほしいと思っては駄目なのだろうか。

真紅の言う通り、確かに真紅の問題でもある。

真紅は影小路の娘。始祖の転生。真紅の将来も、小路流の将来も関わってくる問題だ。

「……私は、護られ過ぎてたんだよ」

まだ離したくない。

「ママにも、紅緒さんにも、黒藤さんにも。……私のことを知ってる影小路の人たちにも。月御門の人にさえ。……だからね」

そっと、真紅が俺の胸を押して距離を取った。真っ直ぐに見上げてくる瞳。……そんな強い瞳をしてくれるな。

「今度は私が護りたい。護られているだけの場所にはいられない」

「―――……」

なら、この手は必要ないのか? 真紅には、もう……。

「だからね、今度は私が黎をもらいに行く」

「………は?」

も、もら……?

「影小路の家に入って、自分で立って見せる。影小路と桜城の家は繋がりがあるから、私が桜城にお願いしに行く。黎のこと、私にくださいって」

「………」

な、なんと……?