「兄貴、やっぱ熱烈歓迎なんだけど。さっさと戻ったら?」

「……そんな簡単じゃない」

溜息をついていると、美愛さんが寄って来た。

美愛さんは十代で成長が止まったような容姿で、今の俺と並んでも母には絶対見られないだろう。

純粋な吸血鬼は不老不死とも言うから、美愛さんのもそれだろう。混血の俺は、それはないようだ。

「レイ、急にどうしたの? 小埜様にはちゃんと話してあるの?」

「じじ――小埜のご当主には、式に言伝を頼みました。それより誠さん、美愛さん、話したいことが――

「ママって呼んでって言ってるでしょ?」

と、自分と同じ銀色の瞳を向けてくる母。

「色々と無理です」

「私のことも父さんとか」

「わたしのことは弥生お母さんって呼んでね?」

「……誠さんはともかく、弥生さんは色々違うでしょう……」

この三人、複雑な関係ながらものすごく仲がいい。基本的にテンションがあまり高くない俺にはついていけない。

……架の父は、この三人の抑え役だった。

架もため息をついている。

「兄貴が戻ってくれたらこのノリ、半分くらい引き受けてほしいんだけど……」

はー……と疲れている弟。すまん。苦労させているな。だが、戻る気はないし、戻ることもないだろう。

「美愛、弥生、今は黎の話を聞こうか?」

兄弟(俺たち)を囲んでわちゃわちゃしている母たちに、誠さんが言った。