「おかえりなさい! レイ!」

「……ただいま帰りました」

桜城家の門を弟とともにくぐった途端飛び出して来た母に、疲れた顔で応じた。それに架の母が継ぐ。

「まったくこんな夜更けに来るんだもの。昼間に来ていたらもっとみんなでお迎えしたのに」

「……それが嫌だからこんな時間なんですが」

そして父も待っていた。

「架も一緒ということは、兄弟喧嘩は終わったのか?」

「……そもそも喧嘩なんかしていません」

俺が桜城の敷地に入るなり、弾丸のように飛んできた三人。父の誠さんと、母の美愛さん。そして、架の母の弥生さんだ。

俺は父に似た東洋系の顔立ちで、純粋な西洋人である母に似ているのは瞳の色くらいだ。

架は、弥生さんの目鼻立ちのはっきりした面差しと――本人は知らないけど――実の父の柔らかい眼差しとを受け継いでいる。

兄が父当主にそっくりなのに弟は似ていない――という、本当のことを知らない親族の噂話が架の耳に入らないように、桜城に居た頃は苦心していたりする。

誠さんが架に視線を遣(や)った。

「架、とりあえずみんなを起こして――」

「やめてください! 寝静まっている時間です!」

とんでもない主命をくだそうとした父当主に叫ぶ。

……俺が小埜家へ出ることを簡単に承諾したのは、偏(ひとえ)にこのテンションが高くノリの良すぎる三人から離れたかったのもある。