真紅が倒れていた時、明らかに致死量以上の血は流れていた。
だが真紅は瞬きをし、かすかながら喋ることも出来た。
並ではなかった生命力。それも、始祖の転生という特殊な生まれの命ならば、理由になる。
……真紅は、知ったのだろうか。
最初に逢った時は、真紅は何も知らないようだった。
妖異なんかも視えていなかった。
だが、架が言っていた。
『黒藤様に感づかれる前に―ー』
影小路の目的はわからないが、真紅に接触する気があるのは確かだ。もう接触しているかもしれない。
そして、真紅にはどんな力があるというのだろう――。
………。
腕(かいな)に抱いたとき、重さを感じなかった。
血と共に生気まで流れ出ていったかと思ったほどだ。でも、その指先が動いて――
逢いたい。一度逢ってしまえば、引き返すことなんて出来ない。わかっていながら、摑みかかって来た真紅の手を摑んだ。
……退き返す気なんか、もうないのかもしれない。
「………」
一つ、考えていたことがある。
どうせもう、真紅から離れられそうにない。
ならば、俺の一生は、真紅とともにあればいい。
「一人で残業?」
「勝手に入ると怒られるぞ。俺が」
「兄貴が怒られるだけなら毎日侵入してやろうか」
どうやって警備の目を抜けて来たんだか……弟だった。
「さっき梨実さんとこ来なかったけど、真紅ちゃんに逢わなくてよかったの?」