大方の職員も帰り、夜勤の医師と看護師、入院患者に救急で来た患者や付き添いしかいない夜半過ぎ。

院長秘書室で一人、そっとパソコンを閉じた。俺は小埜家の方針で、現状医学生だ。

……ため息が出る。

真紅が影小路に連なるとは、昨日知ったばかりだ。

そして、真紅には申し訳ないが、勝手に調べさせてもらった。

真紅の姓である桜木家は、今は廃れてその体をなしていないが、元は退鬼師の血筋らしい。

――退『鬼』師。

俺は鬼人の血を継いでいる上に、吸血が必要なことからわかるように、その本性(ほんしょう)は吸血鬼だ。

真紅を助けたとき、自分の血も送っているが、その前には真紅の血を吸っている。

そのため真紅の血が俺の身のうちを流れているが、今のところ不調ということはない。

退鬼師……しかも血で浄化するタイプだって言うんだから、本来なら俺はもうやられているんじゃないか?

けど……。

失いたくないから、離れた。