そうだ。眠る意識の前。何かに襲われて斬りつけられて――殺されかけて、吸血鬼に助けられて、そして、血を求められて――そんな夢を、見ていた。
「……ほんとう…?」
大きく目を見開き、見知らぬはずの青年を見つめる。知らないはずなのに、名前がわかる。私は、彼が誰だか知っている。
「……れい………?」
そんな名前で、
「そうだよ」
「黎、明……の」
そんな意味で、
「憶えてるじゃないか」
「……私、死ななかったの………?」
自分は確かに、この人に命をあげたはずなのに。
「死ぬよ。俺が血をもらうからな」
黎明の吸血鬼が立ち上がった。私はびくりと身体を震わせ、布団で身体を護るように握り締めた。
「じゃあ――」
「でも、今じゃない」
黎明の吸血鬼は、言葉とともに足を停める。
「………」
長身のその瞳を睨み上げる。銀――さっきは月を背負っていた、その瞳の色。人間にこんな目の色はあっただろうか。
「今は死なせてやらない。俺は真紅の血がほしいから、死なせたくない」
「……何、勝手なこと……」
「そうだよ。勝手なことだ。俺の勝手な願望で、真紅を死なせたくないだけだ。真紅の血がほしいだけだ」
「な――」