「つまり、黎明のの血から、眠る真紅の血の退鬼師性を除くために真紅が人間になる。これによって黎明のを退鬼する可能性がなくなるというのは賭けだ。どちらに寄るかは、何度も言うが、真紅の血がどの性(さが)を多く持っているかに寄る。だが、紅緒様の封じの上では、俺たちに推し量ることは難しい」

「………」

「その次に来る問題は海雨の残滓を取り除くことだな。真紅は自分がやりたいと言ったが、危急を要するのは黎明のだ。そのために力を捨てれば、取り戻すこと叶わず、海雨の浄化を真紅が行うことは出来ない。こちらは確定と言っていい」

「……それじゃ、海雨は……」

「海雨の浄化を俺が請け負うことは出来る。だが、真紅の望んだ形は不可能になる。そして、真紅がやるのが一番よいのではないかというのが俺と黒の見解でもある。……こんな言い方になってしまうが、生来の力を捨てると言うことは、真紅にとって二者択一となる問題がついてくる」

「………」

二人とも失いたくないと思った。強く、強く、今も。

「どうする? 経過を聞いても、力を捨てる、真紅はそれを望むか?」

こちらを見た白ちゃんに問われて、俯いた。

覚悟の問題? 誰を助けて、誰を助けないか? 

抱えた秘密を、身の内に押し込めて死ぬまで口の端にも出さない。

……そんな真紅(じぶん)を、黎は、海雨は、どう思うだろうか。

……なんでそんなことするのって、怒るだろうな。

陰陽師の方へ行くなんて、それだけで海雨には心配をかける。黎も、自身を責めてしまうかもしれない。海雨のために、黎のためにと選んだ道だから。

――私は、やっと顔をあげた。

「望まない」