「………」
『白のひ――若君なら察しておられよう。お嬢はご自分の血に迷っておられる』
「………」
るうちゃんの言い分に、私は反論も、しかし付け足しも出来なかった。
「……真紅」
白ちゃんは、自分の隣へ私を呼んだ。座るよう促され、そっと腰をかけた。
庭には、無炎さんだけがいる。
「……私、……」
「うん」
「影小路へ、入るつもりだった」
「うん」
「……白ちゃんに、問われるまでは、それが私に出来ることなら、て……」
「ああ」
けど、
「……こわく、なった」
「………」
「白ちゃんほどの覚悟なんて、わたしにはない。全然、持てそうにもない……」
「………」
「でも、海雨も黎も、失いたくない。助けたい――護りたいの。……私が」
「……ああ」
「そのために、一つ訊きたい」
「なんだ?」
「私にあるっていう力――血、かな……。捨てることは、出来るの?」
「……陰陽師やこちらの世界へは入らないということか?」
「……まだ、決めかねてる。今、私にとって一番大きい問題は、黎の中にある私の血。もし、私が影小路や桜木としての力を手放したなら、黎の中の血も、力を失ったりする?」
私の力が血によって定められているとしたら、その可能性はないだろうか。
「出来るよ」
「っ!」
「真紅が力を捨て、ただの人間になることは出来る。ただし、その代償として、真紅がこの先その力を取り戻すことは叶わないだろう」
「―――」