煌めくような銀色の髪は一度結い上げられてから背中を流れ、足元まで伸びている。纏っているのは着物だけど、重そうには見えない。腕にはそれこそ天女の羽衣のような領巾(ひれ)が巻かれていて、その面差しは優し気な透明感がある。瞳の色も、髪と同じ銀色だ。

……黎と似ている。

その瞳の色と、黎の瞳の色。そして、黒藤さんの髪に混ざった銀。

「白桜様がお待ちでいらっしゃいますわ。真紅お嬢様、涙雨殿」

「あっ、は、はいっ。……えーと……?」

いきなりお嬢様なんて言われて面喰ってしまったいた。

「わたくしは天音と申します。白桜様がお生まれになった頃よりの配下(はいか)ですわ」

さ、中へ、と天音さんは導くように身を翻した。

肩口のるうちゃんを見た。るうちゃんが肯いたのを見て、天音さんのあとに続いた。





「白桜様。真紅お嬢様がいらっしゃいました」

「ああ、ありがとう。天音、お前は百合姫の方へ」

「御意(ぎょい)にございますわ」

天音さんが庭を歩いて案内してくれたのは、池のある庭に面した部屋だった。とりあえず、やっぱりこの敷地も家も広かった。縁側から入っていいのかと迷っていると、着流し姿の白ちゃんが縁に腰をおろした。

「家の中へ通せなくてすまない。家の者には真紅のことは言ってないものでな」

「いえ――私こそこんな時間に、ごめんなさい……」

謝ると、白ちゃんはふっと笑みを見せた。

「構わない。真紅は大事な依頼人だ。それで――涙雨がここへ連れてくるとは、どうした?」

『真紅嬢は迷っておいでなのだ』

肩口のるうちゃんが、私より先に口を開いた。