ふと、るうちゃんの声がした。考えに浸って視界がぼんやりしている間にるうちゃんは起きていた。
『白(しろ)の姫君のところへ、ゆかれるか?』
「る―――」
声に出しかけて、はっとつぐんだ。るうちゃんの声は私にしか聞こえないから、ママを起こしてしまうかもしれない。
るうちゃんは翼の先で、とんとんと自分の頭を叩いた。もしかして……
……るうちゃん、聞こえてるの?
さっきまでと同じように頭の中で話しかけた。
『真紅嬢が最初に涙雨に呼びかけてから考え始めたからな。申し訳ないが距離も近いゆえ届いてしまうのだ。考えていることが筒抜けなわけではないから安心されよ。それでだが、白の姫君のところへゆかれるか? 涙雨が案内(あない)するぞ』
………。
もしかして。
……るうちゃん、さっき白ちゃんのことそう呼ぼうとして怒られたの?
『………』
るうちゃんから返事はなかった。かわりにがっくりうなだれた。
……大丈夫?
『……涙雨は、黒の若君の式の中で新参者ゆえ、幼き頃のお二人を知らなんだ。白の姫君のことも、若君からの話しか聞いていなかったゆえ、おなごじゃと思っておった。しかし逢ってみたらあの様でのぉ。黒の若君との話の中ではずっと『白の姫君』と呼んでおったゆえ、なかなか癖が抜けなんだ』
……大変そうだね。