ママはたくさんのご飯を作って待ってくれていた。

同じ食卓について、出来たての料理を食べて、やっと心は落ち着いて来た。

「真紅ちゃんは桜城架くんのこと、すきなの?」

布団を敷いて寝る準備をしているときに、ママが唐突に訊いて来た。私は思いっきりむせてしまった。

「あらあら、大丈夫? 恥ずかしいの?」

「まっ、ママ……、桜城くんは友達。そんで、桜城の家の人だから私の傍にいてくれただけだよ。……さっき桜城くんに挨拶してたんだから、おうちのことは知ってるんじゃないの?」

『君が桜城くんね――』

確かにママはそう言った。恨みがましく睨むと、ママは口元を手で隠してわざとらしく微笑んだ。

「だって架くん、白ちゃんに睨まれても帰らなかったから。白ちゃんと黒ちゃんは若年(じゃくねん)だけど、当代きっての実力者よ。逆らってもいいことはないって、わかってると思って」

「………」

当代きっての実力者。月御門白桜と、影小路黒藤。

「……私がすきなのは、桜城くんのお兄さんだよ」

「お兄さんがいらっしゃるの? けど、桜城家の跡継ぎは架くんだって聞いたことあるけど……」

ママは小首を傾げた。黎のことは知らないのか……。

「なんか、お母さんが違うんだって。その……そういった意味で色々あるみたい」

「そうなの……。お兄さんも淋しい思いをされていたのかしら……」

『独りになるように、自分で仕向けていたんだ――』