口の端に笑みを見せた白ちゃん。白ちゃんは、黒藤さんを高く評価しているようだ。

「……それって」

「どうした?」

「……私、には出来ない?」

「海雨の浄化を、か?」

驚いた響きの白ちゃんの応答。それに肯いた。

「もしも……私に出来るのなら、私が海雨を助けたい」

「………」

白ちゃんはしかつめらしい顔で私を見てくる。

私はまだ、ただの人間だ。生来の力が目覚めつつあるというだけで、本当に陰陽師性の力があるかもわからない。

私に強く出ているのが桜木の血だったら、という可能性もあるだろう。

「……それには、いくつか条件がある」

「……条件?」

私が訊き返すと、白ちゃんの足が停まった。つられて、私と架くんも。

「一つは、誕生日を無事に迎え生来の力を取り戻し、かつコントロールすることが出来ること。大きな力は、扱い切れずに暴走して、術者本人を殺してしまうこともある」

「………」

「二つ目は、陰陽師としての訓練――鍛錬(たんれん)とも言おうか、修行を受けること。真紅は小路の血筋だから、小路流の陰陽師となること。それから――」

不意に白ちゃんは、言葉を切った。私はただ、見上げる。

白ちゃんの瞳が、三日月のような鋭さで見返して来た。

「……陰陽師となって知ったことを、墓場まで持って行く気概があるかどうか、だ。伴侶や親と言えど口にしてはならない依頼を、多く受けるのが陰陽師だ。依頼の内容や結末に心を痛めても、その理由は誰にも話してはならない。悟られてもならない。口に出して辛さを緩和することは、俺たちには赦されない。……それでも、望むか?」

白ちゃんの厳しい言葉に、私は思わず喉をひくつかせた。