……ママは哀しかっただろうか。自分が幼い頃に逢いに来てくれた妹が、家の為に永い眠りについたこと。それでも、約束を残してくれたこと。
……今日から、ママと一緒だ。訊ける機会が、あったらいいな。
「だからね、ぼんやりとなんだけど、これから先はママとは離れていたくないっていうか。……もし結婚する人がいたらママとは仲良くしてもらいたいし、出来たら……一緒に暮らしてもらいたい」
私の素直な気持ちを聞いた架くんは、それをどう思っただろうか。
「な、なんかマザコン発言だよねっ」
恥ずかしくなって、取り繕うようにあははと笑う。けど、架くんは笑わなかった。
「今まで淋しい時間があったんだから、思いっきり甘えていいと思うよ」
気遣うように言われて、唇を噛んだ。
この兄弟は……黎の方が言葉遣いは荒っぽいけど、芯を射抜くようなことを不意に言ってくるから困る。
「……海雨には、まだ言わないでほしい」
「全部?」
「桜城くんの家のこととかは私が決められることじゃないけど、影小路やうちの方に関することは、私が向かう先を決めたら、話そうと思ってる」
私が影小路へゆくことを決めた中には、海雨の存在がある。海雨は、私のこれからに無関係ではいられない。
だから、これは私が決める自分の将来だから、決めてから、話せることは、話そうと考えている。
「わかった。俺も、下手に家のことを知られたいとは、思ってないから」
「……ありがとう」