「……うん」
「黎の傍にいていい、私になりたい」
「うん」
「正直、私を殺そうとしたものなんて、どうでもいい。どうでもいいくらい、黎の方が、大事」
そして、
「海雨に何かが憑いていて、それを陰陽師という方法でなんとか出来るなら、私はそうする」
「……そう」
「うん。――私は、白ちゃんと黒藤さんの方へ、行きたい」
「―――」
それは影小路に入るということ。海雨を助けるため、鬼を殺す自分の血に克つため。――自分の血を、克服するため。
「黒藤さんに逢って、影小路や桜木の話を聞いてから、なりたい自分が二つあったの」
「……訊いても?」
「海雨と、ずっと親友(ともだち)でいること。……黎と、一緒にいる自分であること」
「………」
「どっちも、捨てられないの。だから……架くんって、呼んでもいいかな?」
名前を呼ぶ。陰陽師の血を持つ自分が。それには意味がある。
架くんは微笑を浮かべて答えた。
「いいよ。なら俺にとって真紅ちゃんは『姫』になるね。――正統・影小路の姫君」
……ひめっ!? いきなりぶっ飛んだ話に声が裏返った。