白ちゃんに促されて、私はその隣に並んだ。
……のを、すぐに後悔した。
今更ながら、白ちゃんの――黒藤さんも――容姿は人目を引くのだと実感した。
しかもこの制服――名家の子弟が多いと有名な、名門・斎陵学園(せいりょうがくえん)のものだ。
学校がここから遠いわけじゃないけど、この辺りでは見ない制服姿。何故そんな人がこんなところを歩いていると、好奇の瞳で見られている。
……しかも白ちゃんの制服は男子のもので、パッと見もイケメン男子。更に私の隣には学園で王子様然と見られている桜城くん。クラスメイトの女子には黎が彼氏だと宣言したばかりだけど……。
「……ごめん、白ちゃん、離れて歩いてもいい?」
「? どうした?」
「……みんなに見られてる……」
桜城くんと仲いいと思われていた時も大変だったのに、本当は女の子の白桜とまでヘンな目でみられてはそれこそ厄介だ。特に若君あたりに。
「そうか。俺が傍にいては普通の人間には悪影響が出ることがあるからな。真紅の友人にも逢わないようにするつもりだから、少し遅れて行くことにするよ。涙雨、頼んだぞ」
……白ちゃんの斜め方向への解釈に訂正を入れる間もなく、白ちゃんはすっと逸れて行った。
残された私と桜城くんは、一度顔を見合わせた。
「なんか……すごい人だね、白ちゃんって」
「十六歳で、最大流派・御門一門の当主だからね。色々と規格外だよ」
桜城くんは疲れたように声を出す。
「桜城くんも……色々大変そうだね?」
「俺は生まれつきだから。……これから、色々大変になるのは真紅ちゃんだよ? 紅緒様が目覚められて、真紅ちゃんが転生だって小路の人に知られれば、影小路本家への復帰を望まれるはずだ。生みの親である紅亜様にも話は行くかもしれない。……そういうとこ、もう考えてる?」
「……うん」
もう、考えている。自分がこうしたいと思うことが、二つだけ、ある、それを叶えるための手段は、誰かに教えてを乞うしかないけれど。
「……さっき話してたのって、梨実さんのことだよね? 何かが取り憑いて、って……」
「……そう」
海雨の周りに、黒いものが漂っている。