「真紅ちゃん、大丈夫? いきなり結界なんかに取り込まれて、気分悪くなってない?」

気遣ってくれる桜城くんだけど、そういった症状はなかった。
「大丈夫」

「そう? ならいいけど――兄貴が血を吸ったって、どういうこと?」

「!! ちょっ! 今ここでそういう話は――」

「答えて」

「―――………」

真剣な眼差しで言われて、根負けした。桜城くんのやり方を変えるのは相当の力がいるようだ。

「……自分から死ぬんじゃなくて、殺されて死ぬのなら、いいかなって思った。……私は、海雨のドナー適合者なの」

「―――」

「それだけ、だよ。でも、野垂れ死んだら意味がない。黎に見つけられて、血をくれないかって言われて、ならあげるって言った。……血は黎にあげるつもりだった。海雨に要るものは、海雨にあげたかった」

「……本当に、死ぬつもりだったんだ?」

「……うん」

そうして、終わることを望んでいたはず。でも、黎は私を助けた。

少しして、小首を傾げて微苦笑を浮かべた。

「今は、自分が死ぬなんて気、全然なくなっちゃったけど」

逢いたい人がいるから。

二度と逢ってはいけない人かもしれないけど。

「真紅、架、行くぞ。あまり遅くなると厄介だ」