「うん。あとは……わからない」

「その特徴で妖異だと考えると、烏の可能性かな……」

「からす?」

「烏天狗だ。妖力が高いために、ヒトと同じ姿をとることができる。それが真紅を襲う理由までは今はわからないが……刀で襲われたのか?」

「たぶん……背中をざっくりやられて、黎には致死量の血が出ていたって言われた。その傷も、黎が治してくれたらしいの。今はもうかすり傷のあともないよ」

「黎明(れいめい)のは鬼性(きしょう)が強いと聞いていたが、そこまで出来るか……。で、二つ目の真紅の心配はそこでいいのか?」

白ちゃんに問われて、少しだけ視線を俯けた。すぐにまた、瞳には白い陰陽師が映る。

「今、私の身体には黎の血が流れているみたい。その前に黎は私の血を吸っているから、……今の黎には、私の血が流れている。昨日黒藤さんに聞いた。桜城の血は、退鬼師の血だって」

「黎明のを廻る退鬼師の血か……」

「……私の血、が……黎に害悪を与えることは、ないの? まさか、……黎のこと――……」

「架」

白ちゃんに呼ばれ、先ほどの話に驚きが過ぎて呆然としてしまっていた桜城くんがはっと見返した。

「昨日、黎明のに逢ったんだろう? いつもと違う様子はなかったか?」

「いつもとって……俺にイラついていたぐらいしか変わりないと思ってましたが……」

「お前に? 何故」

「え、それは……」