「え、と……」

問われて、そっと桜城くんを窺った。桜城くんに話していいものだろうか……。考えていると、白桜さんが言った。

「架のことは気にしなくていい。真紅の護衛だと言っている以上、真紅に危害はないだろう。……な?」

白桜さんは艶っぽい笑みを桜城くんに向けた。桜城くんは不機嫌そうな顔で――その表情はどことなく黎に似ていて――肯いた。

「俺のことは気にしないで話して大丈夫だよ」

桜城くんにまで言われて、話すことを渋々決めた。これ以上突っぱねても話は堂々巡りするだけだ。

「えっと……白桜さん? でいい?」

「白で構わない。真紅とは同学年だ」

「じゃあ、……白ちゃん」

「なんだ?」

「白ちゃん……二つ、訊きたいことがあるの」

「うん」

「その……普通の人には視えないモノが、人間に……取り憑く? っていうのかな……ずっとその人の影に混ざりこんでいて、その人を、殺さずに、でも、身体的に弱い状態でいさせることって、ある?」

白ちゃんは、私の現状を悟ってくれた。けど、自分ではまだそれが『感覚的』にしかわからない。説明したいことも核が摑めず、あやふやな言い方になってしまった。

「それは……真紅の近くにそういう人がいるということか?」

「うん……幼稚園からの幼馴染で、病弱っていうか……入院がちなの。昨日、はっきり目に見えるまで全然気づかなくて……昨日気づいたのも病院を離れたあとだから、視えるようになってから逢ってない。今日見たら何か違うかなって思ってるんだけど……」

「……簡単にその事象の是非で答えるなら、それはあり得ないとは言えない。俺たちは前例のないモノを相手にすることが多いから、まず否定は出来ないな」

白ちゃんは慎重に答えた。前例のないモノ……。

「……桜城くん」

「なに?」

「正直、私はこれからの話をする前に、白ちゃんと二人にしてほしいのだけど……」