ママに倣(なら)わず言い切った桜城くんに、白桜さんから冷えた視線が投げられた。桜城くんはそれに臆せず睨み返した。

「俺は真紅ちゃんのことを護衛するようにと言いつかっております。白桜さんと言えど、二人きりにはさせられません」

「………」

「さ、桜城くん……」

桜城くんには、出来ればこの場を離れていてほしかった。

……誰にも話したことのないことを、白桜さんに話す決意を固めたばかりだったから。

白桜さんは、私が何を話そうとしているのかわかっているようなことを言った。

「……残れば、架が聞きたくないことを聞かなければならなくなるぞ?」

「知らないことを知れるなら、本望です」

白桜さんは唇だけでささやいた。

お前のことでも? と。

――おそらく白桜さんは、桜城家の内情を知っている。

ママが桜城家にあったことを知っているのかはわからなかったけど、黒藤さんに帰るよう促されても何も言わなかった。

それとも、一度言ったことは違えないということだろうか。

一気に、空間からヒトの気配が消えた。感覚的にしかわからないけど、ママと黒藤さんはもう『ここ』にいない。

慣れない感じに思わず首を巡らしていると、白桜さんが低く口を開いた。

「……架。お前の意思で残ったから言わせてもらうが、今後一切お前に発言をゆるさない。言ったよな? 俺が用あるのは真紅だけだと」

「……承知しています。けど、いざ貴方が真紅ちゃんに害悪あれば、前言は撤回します」

「構わん。真紅。……おーい、真紅―」

「はっ、はいっ!」

ママと黒藤さんに気を取られていた意識が、白桜さんに呼ばれて一気に戻った。

「その様子では……視え始めているか? それとも聞こえるか」