「………」
私、半眼になった。そっちの意味か……。
なんか、桜城くんは『若君』のことでは相当苦労していそうだなあ……。
兄は家督(かとく)的な意味では実家に関わる気はないみたいだし。
「……黒ちゃん。あまり周りに迷惑かけちゃダメよ? それに陰陽師が呪っては駄目よ?」
さっきまで少しバチバチしていたママからそんなことを言われる始末。黒藤さんは聞いていないフリをするようにそっぽをむいた。
「あれ? ママは白桜さんが女の子って、知ってたの?」
さきほど、『白ちゃん』と呼んでいて、『ばれちゃった?』とも言っていた。
「うん。白ちゃんのお母さんと、紅緒が友達だった縁でね」
「紅亜様、これ以上広めないでください」
白桜さんに文句を言われて、ママは不承不承の体で「はーい」と言った。
――月御門白桜さん。どうしてかすぐの女の子だと『わかった』人。
……拳を作った。
「私からも、白桜さんにお話、ある。ママ、白桜さんとだけ話したい。少し、待っててもらってもいいかな?」
ママは、けれど渋い顔を崩さなかった。
「いんじゃないのか?」
呑気な響きで言ったのは黒藤さんだった。
「真紅も白のが話しやすいだろ。古人翁(ふるひとおう)から話を受けたのは白なんだし。紅亜様も、いいでしょう?」
黒藤さんに笑顔で促されて、ママも桜城くんも咄嗟には反論しなかった。黒藤さんは、白桜さんに向き直った。
「白、先に戻ってる。真紅のことは紅亜様のところまで送ってくれよ?」
「わかってる。紅亜様、真紅嬢はご自宅まで必ずお届けいたしますので、どうかご容赦を」
白桜さんにも言われて、ママは細く息を吐いた。
「……わかったわ。真紅ちゃんと一緒に帰りたかったけど……白ちゃん、ちゃんと私のところへ連れて来てね?」
「承知しました」
「――俺はここにいます」