白桜さんの一声に、二人がこちらを見た。それを遮って桜城くんが言い募る。

「いや白桜さんのことでしょう。女性……なんですか?」

ちっと、白桜さんが舌打ちをした。……白桜さん、話を逸らす気だったな?

「黒が言わなきゃバレなかったものを……」

「俺も他言しないことはお約束します」

「わ、私も」

桜城くんにつられて、私も言った。すると白桜さんは、ふう、と息を吐く。

「その通り。俺は元来は女だ。だが、男として生きていく。それ以上の詮索は無用と願いたい」

言い切った白桜さんだけど――

「将来的には俺の嫁に
「涙雨ごと燃やすぞボケ」
『!』

言い切った白桜さんに、私の肩の上でるうちゃんがぷるぷる震え出した。

……この可愛い式にとんだとばっちりを。そしてはっきり言ったね。『嫁』って。

つまり黒藤さんは、白桜さんが(どういうわけか)本来は女性であると知って好意を隠さないのか。

桜城くんが驚いていたように、白桜さんへの周囲からの認識は男性なのだろう……メンタル強いな、若君。

「俺の話はもういいだろう。俺が用あるのは真紅嬢だけだ。架、お前は帰れ。ついでに黒も持って帰ってくれ」

「いやです」

即座に返した桜城くんに、白桜さんは目を細める。

「……お前には関係のない話だ。居座られては面倒だ」

「じゃなくて。若君を連れて帰るなんて無理に決まってるでしょう! 異様な白桜さん好きなんですからねっ? 無理に白桜さんから引き離したら一族郎党呪い殺されます!」