その様子にふふっと笑う女の子。
 よくみたら何ら特別な子でない、普通の小学生の女の子。
 水色のTシャツに短めのスカート、手首にはビーズで作ったのかカラフルなブレスレットがつけられている。

「可愛いね、このブレスレット」
「うん……」
「どうしました?」

 日和が目の前で急に落ち込む姿を見せる女の子に声をかける。
 すると、ゆっくりと女の子は口を開いた。

「引っ越しちゃうの」
「え?」
「金魚すくい大会の次の日、これくれた友達引っ越しちゃう。だから、その友達と一緒のチームで出れる最後の大会」

(そういうことか……。この子は個人戦で勝ちたかったんじゃない、団体戦で一緒に勝ちたい子がいたんだ)

 琴子は女の子の目線に合わせるように屈むと、顔を覗き込んで優しい顔で言う。

「そのお友達もきっと君と同じで一緒に勝ちたいって思ってると思う。でも、それよりも一緒に出て楽しむことも大事にしてみたらどうかな?」
「楽しむ?」
「うん、ちゃんと最後に一緒に闘えることを楽しんでみてごらん。素敵な思い出になると思う」
「……うん」