「暑い~」
「ミコ様、だらしないですよ」
「だってえ~ほんと暑いんだもん! もう日に日に暑くなってるじゃん!」
「あ。ミコ様、人がいらっしゃいました」
「ってもう! 葵聞いてないし」

 葵は社の中に設置されたモニターをじっと見つめる。
 そして「自分では聞き取れませんので」と琴子に聞くように促して自分は一歩引いた。


『今年こそ金魚すくい大会で優勝できますように』


 小学生くらいの小さな女の子が一人、神社にお賽銭を入れて目をぎゅっとつぶりながらお祈りしている。
 女の子の額からは汗が流れ落ち、雫がぽとんと神社の石に沁み込んだ。
 走ってきたのだろうか、前髪が汗で濡れて何本かの束になっている。
 そうしてお祈りをしたあと、女の子は階段を降りて神社を去っていった。