普通の女子高生「神崎琴子(かんざきことこ)」は交通事故でこの世を去った。
 転生先はなんと鹿だった。
 だが、町では鹿は「神獣(しんじゅう)」として敬われており、琴子は神獣の中でも最高位の「ミコ」に転生していた。
 ミコは唯一の人語を理解できる存在であり、かつ自然と会話することのできる存在だった。

 これは、琴子がミコとして人間の願いを叶える物語―


「……コ様……ミコ様……」

 琴子の耳に何かを呼ぶ声がする。
 その声は次第に大きくなる。

「ミコ様っ!」

「っ!」

 日和(ひより)の声に琴子は飛び起きた。

「ミコ様、もうお昼でございます」

「ほえ……??」

 琴子は呆けた顔で日和を見るがまだ焦点が定まらない。

「ミコ様……そろそろ起きてくださいませ。人間の方が朝からお願いに来ておいででしたよ」

「ほわ~……う~ん……おはよ~」

 大きなあくびと伸びをすると琴子は日和に挨拶をする。