「あみは、星のどこが好き?」
突然、聞かれた質問に、私は少しだけ視線を、宙に泳がせた。
どこが好き?うーん。もちろん、その遥か遠い恒星からの光が、此処まで届いていることも凄すぎて好きだし、星座の神話も奥深くて、ロマンティックで好きだし、……イロイロ好きすぎてわかんない。
ーーーーでも一番好きなのは。
「ひとりぼっちの心を埋めてくれる。誰の声も聞こえない。音のない綺麗な世界だから」
「え?」
綺麗な二重瞼を、まんまるに目を見開いた瞬を見て、私も思わず声がでた。
「え?あの……何か変なこと、言った?」
「マジか!嘘だろ。おんなじこと思ってた!」
興奮した様子で、嬉しそうに話す瞬に、何故だか鼓動がとくんと跳ねた。
「わ……私と、同じようなこと考えてるの、瞬が初めて」
思わず口に出した言葉に、瞬のほっぺたが、少しだけ赤くなった。
「……俺さ、耳聞こえないだろ?だからさ、音楽とかさ、流行りのやつ、TikTokとかも苦手なんだよね」
瞬は、左耳に髪をかけた。
「これ、じゃあ、うまく音程が拾いにくくてさ」
瞬の左耳には、私には見慣れない、補聴器が装着されていた。
「だからさ、こういう音のある世界が当たり前のやつが羨ましくてさ。でも……星ってさ、音がなくても楽しめるだろ?むしろ、音が無い方がいいってゆうかさ、誰も居ない夜空に俺だけが包みこまれる感覚と、静寂の中で光る星だけをただ眺めるって、すっげー贅沢だよな」
「あ、うん!すっごくわかる!私だけのプラネタリウムだなって、空を独り占めした気持ちになれるの」
瞬につられて、気持ちが高揚しながら、答えた私をみて、瞬も嬉しそうに笑った。